阿部トマト

詩集(仮)

3/15
俺はあまりの腹痛に顔を歪ませ
手をぎゅっと握りしめていた
しばらくすると痛みが引いたので
ぎゅっとした手を開こうとした

しかし手はぎゅっとしたまま
ピクリとも動かなかった
俺はこのあと修道女のマリンと
あやとりをする約束があった

焦った俺は手を熱湯につけた
何故だかはわからなかったが
温めれば開くそんな気がした
しかし手はぎゅっとしたままだった

今度は手を冷水につけた
何故だかはわからなかったが
冷やせば開くそんな気がした
しかし手はぎゅっとしたままだった

修道女のマリンが来てしまった
マリンは俺のぎゅっとした手をみると
聞いた事のない子守唄を歌ってくれた
すると俺のぎゅっとした手は開き
掌の真ん中に小さな花が咲いていた


3/14
俺は近所にある潰れそうな花屋で
おととい腱鞘炎で死んだ
ネズミのボビーの墓に持ってく
花をジロジロと眺めていた

何かお探しですか?
とくに何かを探してはいない
しかし見つかればそれが
俺が探していたものだ

ではタンポポはどうでしょうか?
てめえ俺が安い服を着てるからって
バカにしてんじゃねーよ
タンポポなんて公園で採れるだろ

てめえタンポポをバカにしてんじゃねーよ
タンポポは踏まれようと蹴飛ばされようと
くじけず何度も立ち上がり綿毛になって
風に乗ってどこまで旅をする開拓者だぞ

俺はゆっくりとタンポポを手に取り
しばらくジロジロと眺めていた
このタンポポを俺に売ってくれないか?
いいだろう5ドルと40セントだ

3/13
俺は庭を歩いていると
何かに足の小指をぶつけてしまった
俺はあまりの痛さに飛び上がり
大声で何度もファックと叫んだ

すると隣に住んでいる
性病で旦那に先立たれた
白髪のババアのドロシーが
こんな夜中にうるせえと
俺に向かって怒鳴り散らしてきた

俺は小指にぶつけた何かを拾い
性病で旦那に先立たれた
白髪のババアのドロシーに向かって
思い切りそれをぶん投げた

するとドロシーが静かになった
あまりにも静かすぎて俺は怖くなり
恐る恐るドロシーに近づいた
ドロシーは息をしていなかった

俺はすまなかったと言いながら
ドロシーにフレンチキスをした
するとドロシーは目を覚まし
俺に長いディープキスをした

3/12
俺は崖から飛び降りそうな男に
ライターを持ってないかと聞いた
男はライターはないがマッチはある
と言って俺にマッチをくれた

俺がマッチを返そうとすると
男は俺にはもう必要にないからやる
と言って俺に突き返してきた
俺は天国でも煙草は吸えるぞと言った
すると男は俺が行くのは地獄だ
そう言って崖から飛び降りた

俺はしばらく男が飛び降りた海を
煙草をふかしながら眺めていると
水面にプカプカと男の死体が浮いてきた
俺は男に向かって地獄で煙草は吸えたかい?
と聞いたが男からの返事は返ってこなかった

俺はシャレたビーチのバーに入った
バーテンダーに一番安い酒をくれと言った
すると隣にビショビショの男が座った
男はバーテンダーに一番安い酒をくれと言った


どうやら俺は地獄にも嫌われてるみたいだ
そう言ってビショビショの男は安い酒を飲んだ
だったら天国に行けるようにもう少しこっちで頑張れよ
そう言って俺はマッチを返し地獄へと帰って行った

3/11
俺は火のついた森にいた
火照った俺の体から
盛りのついた汗がしたたり落ちる
俺はいつでも自分の意思で
この森から出ることができる

それでも俺は森から出なかった
正確に言えば出ないのではなく
ただ単に出たくなかったのだ
なぜなら外は凍えるような寒さで
触れると痛い冷たい風が吹いている

すると空から猫が降ってきた
猫はあまりの熱さに飛び跳ねていた
俺は猫をぎゅっと抱きしめてやると
猫は俺の腕の中で眠りだした

俺にはもう森から出る理由がなかった
だがいつまでもここにいてはいけない気がした
なぜなら動かないことは死と同じことだから
俺は眠っていた猫をカウチの上に乗せ
火のついた森を海水で鎮めてやった

火の消えた森はただの森になった
眠っていた猫はそそくさと家に帰った
ここは俺のいる場所ではなくなった
俺は残っていた種火で煙草に火をつけ
次はどこへ行こうかと考えながら笑っていた

3/10
俺は突然の吐き気に襲われ
急いでバスルームへ向かい
バスタブに向かって思い切り
吐き気を吐き出した

すると大きな塊が
ゴロンとバスタブに落ちた
俺はそいつをオーガニックの
シャンプーでゴシゴシと洗い
シャワーで洗い流してやった

タオルで軽く拭いたあと
ドライヤーでよく乾かし
母親のベビーオイルを塗り
俺のお気に入りのコロンを
手首と首筋につけてやった

すると娼婦のマリアがやってきた
あんた何で心臓を持っているんだい
俺はすぐに自分の胸に手を当てた
しかし心音はまったく聴こえなかった

俺は急いで心臓を飲み込んだ
もう一度胸に手を当てると
ドクドクと心音が聴こえた
あんたファックするの?しないの?
するに決まってるだろと俺は答え
一晩中はげしく心音を鳴らし続けた

3/9
俺はウイスキーの中で
苦しそうに溺れるビーンズを
しばらくじっくりと眺めたあと
中指の腹に乗せて救ってやった

ビーンズの皮膚は
半分ほど溶けはじめていて
中からドロっとした何かが
マグマのように溢れ出ていた

俺はそのドロっとした何かを
中指の腹ですくい口に入れた
見た目はガキのおもちゃみたいだが
味は想像を絶する美味だった

俺はすぐにこれをもう一つくれと
バーテンダーに小さい声で言ったが
それはうちのじゃない
あの客が入れたんだと言って
カウンターに座る老人を指差した

俺は老人の隣に座った
おいジジイあれを売ってくれ
1個寿命1年じゃが何個欲しい?
もちろんあるだけ全部くれ
では先に寿命を100年もらおう

3/8
俺はボンネットのなかを
優雅に泳いでいる魚を眺めながら
ランチに食べるかディナーに食べるか
考えながら裸眼でじっと眺めていた

たまに勢い余って壁にぶつかり
跳ねた水が俺の顔に飛び散る
普通の男ならその不快さに顔を歪ませ
すぐにナプキンで顔を拭く

しかし俺は違う
魚を食べたときの快楽への期待が
あまりにも大きかったため
水が顔に飛び散った不快さなんて
俺にとっては屁でもなかった

俺は魚を鷲掴みにした
俺は暴れる魚に痛くしないから
なんて優しい言葉はかけなかった
生きるってのは食うか食われるか
今日はたまたまお前が食われる番
ただそれだけのことだ
そう言って俺はナイフをエラに
突き刺そうとしたときだった

俺は痩せこけた牛に鷲掴みにされた
牛は暴れる俺に痛くしないから
なんて優しい言葉はかけなかった
生きるってのは食うか食われるか
今日はたまたまお前が食われる番
ただそれだけのことだ
そう言って俺は牛に食われた

3/7
俺は知らない奴に話しかけられた
ハロー最近調子はどうだい?
だがどこをみても誰もいない
俺は気のせいかと思い歩きだした

するとまた俺は話しかけられた
ハロー最近調子はどうだい?
俺は胸元から銃を取り出した
どこにいるんだ出てこないと
お前の体を穴だらけにするぞ

しかし誰も出てこない
俺は弾がなくなるまで
そこらじゅうを銃で撃ちまくった
あたりをよく調べてみたが
死んだネズミしかいなかった

俺は知らない奴に話しかけられた
あんたどうして私の旦那を殺したの?
下をみるとネズミが喋っていた
もしかしてさっき俺に話かけたのは
そこで死んでるネズミなのか?

そうよあれは私の旦那よ
それはすまなかったな
謝って済むならチーズはいらない
じゃあチーズを奢るから許してくれ
最高にクサいブルーチーズが良いわ

3/6
俺は箱の中に閉じ込められていた
きのう知らない奴の葬儀に行き
棺桶の中を覗くと柔らかそうな
ウォーターベットだったので
少しだけ休もうと中に入った

目が覚めると体が動かなかった
ただ小さな窓から顔だけは出てる
誰だか知らない奴が順番に
俺の顔を見ては涙を流しながら
ハンバーガーを俺に渡す

きっと死んだ奴はハンバーガーが
なによりも好きだったに違いない
それにしてもなんで顔を見て
誰も違う奴だと気がつかないんだ

死んだ奴の妻らしき女がきた
女は俺の口唇にキスをした
すると女は地獄で会いましょう
と言ってハンバーガーを俺に渡し
でかい尻をふって帰っていった

俺は小指だけ動くことに気がついた
俺は少しづつハンバーガーを動かし
ようやく口まで運ぶことができた
しかしそれはハンバーガーではなく
どうみてもチーズバーガーだった

3/5
俺はピザ屋を部屋に呼んだ
ここは砂漠のモーテル103号室
しかし3日たっても誰も来ない
俺はもう一度ピザ屋に電話した

一体いつになったら届くんだ?
俺は腹が減って気が狂いそうだ
こっちだって必死に運んでるんだ
黙ってセーターでも編んでろ

俺はモーテルのロビーへ行った
毛糸と編み棒はあるか?
今あるのはアダムとイブだけよ
じゃあそれをあるだけくれ

30ドルよ後で部屋に届けるわ
しかし3日たっても誰も来ない
俺は痺れを切らして自分の髪を
マッチで編みはじめたときだった

ピザ屋だ早くドアを開けろ
お前1週間も何をやってたんだ
珍しい鳥がいたから眺めてたんだ
俺は冷えたピザに金は払わないぞ
金はいらねえよ俺は珍しい鳥を
見ることができたから満足だ

3/4
俺は誰もいないビーチを
目を閉じながら歩いてた
潮の香りや波の音だけが
俺の心を穏やかにする

ふと空を見上げると
鳥や蝶が俺の周りを
騒がしく飛び回り
何か伝えようとしている

すると前からでかい女が
目を閉じながら歩いてきた
歩きすぎたのだろうか
女の足は白く濁っていた

あんたどこへいくんだ?
それがわからないのよ
足が行きたい方へ行かせたら
気がつくとここにいたの

あなたはどこへいくの?
それがわからないんだ
足が行きたい方へ行かせたら
気がつくとここにいたんだ

3/3
私は死後の世界から
来たのと女は言った
女はヨーコと名乗った
どうやら東洋人らしい

俺はしばらくヨーコと
暮らすことにした
ヨーコお前はどうやって
現世に戻って来たんだ?

スリーウェイリバーを
クロールで泳いで来たの
橋もあるんだけど鬼に
6ドル払わないと渡れないの

でもなんで現世に戻ってきたんだ
どうしても会いたい人がいるの
私が喉が渇いて死にそうだったとき
パサパサのスコーンをくれた人よ

そいつはパン屋のガブリエルだ
ガブリエルは喉が渇いて
死にそうな人を見るとスコーンを
あげずにはいられない病気なんだ
お願い私をその人に会わせて
ガブリエルは昨日死んだよ

3/2
俺はペットショップの前で
イカれた女が1匹の猫を
愛おしそうに見つめているのを
チーズを食べながら眺めていた

女は私が助けてやると言い
持っていたフランスパンで
何度もショーケースを叩いた
すると女は店主に捕まり
ショーケースに入れられた

俺はペットショップの前で
イカれた男が1匹の女を
愛おしそうに見つめているのを
チーズを食べながら眺めていた

男は俺が助けてやると言い
持っていたフランスパンで
何度もショーケースを叩いた
すると男は店主に捕まり
ショーケースに入れられた

俺はペットショップに入った
動物たちは死んだ目をしていた
俺はその店の店主を現金で
300ドルで買って帰った
翌日その店の前を通ってみると
動物たちが楽しそうに踊っていた

3/1
俺は天井についているシミが
気になって眠れなかった
だから別れた女が置いてった
牡蠣をシミにぶつけてやった

しかしシミはビクともせず
牡蠣だけがゆっくりと
壁を這いつくばりながら
俺の方へと戻ってきた

俺のことは
そっとしておいてくれ
そう言って牡蠣は
自分の殻に閉じこもった

誰かがドアを叩く音がした
ドアをあけると別れた女がいた
女は走って来たのだろうか
激しく眉毛を揺らしていた

私の牡蠣を返して
俺は黙って牡蠣を渡した
どうして殻に閉じこもってるの
傷つくことを恐れてるんだよ
すると女はヒールで殻をぶち壊し
子守唄を歌いながら帰っていった

2/29
俺はこの目で見てしまった
神が死んだところを
パン屋へ行こうと道を
渡ろうとして馬に轢かれた
あっけない死だった

俺はしばらくそこから動けず
仕方なく座り込みチェスをした
いまさらだが俺は神の顔を
見たことがなかった
俺は神の死体に顔を近づけた

神の顔は俺と同じ顔だった
俺はあまりの衝撃に腰が砕けた
しかしよく見ると俺の方が
ほんの少し鼻がでかかった

もう一度よく見ると
俺の方がほんの少し口がでかく
ほんの少し目が小さく
ほんの少しアゴが割れていた

俺は神の顔をナイフで剥がし
パン屋の試着室で顔につけた
クロワッサンをひとつくれ
神からお代は頂けません
俺は今日から神になった

2/29
間違いなくあれは奴だった
3年前やつは俺に恋をし
毎日のようにつけまわされた
警察署に行っても税務署に行っても
どこへ行っても奴はいた

しかしある日を境に突然いなくなった
はじめはやっといなくなったと
俺は喜び毎日がパーティーだった
しかしそれから数日が経った頃だった
なぜか俺は物足りなさを感じていた

気がつくと俺は奴を探すようになった
俺は毎日のように警察署に行った
俺は毎日のように税務署にに行った
しかしあいつの姿はどこにもなかった

仕事も手につかず客は離れていった
飯もロクに食えず胃は離れていった
俺はすべてを失ったような気持ちになり
銃口を口に突っ込み引き金に手をかけた

ふと前を見るとそこには奴がいた
奴は警察署の署長とキスをしていた
俺はどうして突然いなくなったと聞いた
だって恋の期限は3年だから
女はそう言ってまたキスをはじめた

2/29
俺は駐車場でたむろする
若いトカゲのシッポたちを
買ったばかりのフランスパンで
自分の顔を殴りながら眺めていた

トカゲのシッポは
切れてもすぐに再生する
しかし切れたシッポが
どこへいくかは誰も知らなかった

俺はトカゲの切れたシッポが
どこへいくのかを調べろと
大富豪のトカゲから依頼を受けた
だから俺はいま張り込みをしている

突然シッポたちが動いた
シッポたちは夜の街へ向かった
レストランで肉を食い
バーで酒を飲み
路地裏でファックする

トカゲのシッポも人間も
たいした差はないと俺は報告した
すると大富豪のトカゲは
じゃあ今度は人間の切れた足が
どこへいくか調べてくれと言った

2/28
俺は血の跡を追っていた
アナの花屋を東に曲がり
ボブの鳥屋を西に曲がる
ノアの風屋を南に曲がり
エマの月屋を北に曲がる

途中みんなに声をかけられたが
俺は例外なく全員を無視した
だって俺はプロの探偵だから
だって俺はプロの探偵だから

ルークの春屋を上に曲がり
ジョージの夏屋を下に曲がる
マーカスの秋屋を左に曲がり
ジェシカの冬屋を右に曲がる

途中みんなに声をかけられたが
俺は例外なく全員を無視した
だって俺はプロの探偵だから
だって俺はプロの探偵だから

ついに血の跡がなくなった
ここはマリアの魚屋だった
俺は生臭い匂いが苦手だった
俺はすぐに帰ってシャワーを浴びた
だって俺はプロの探偵だから

2/28
なぜ時計は休まないのか
俺はそう思いながら
拾ったミルクシェイクを
口の中で転がしながら
大切に少しづつ飲んでいた

俺たちだって休めるなら休みたい
先週は俺の幼馴染の時計が死んだ
どうやら過労死だったらしい
俺のダディもマミーも過労死
きっと俺もいつか過労死

だったら休めばいいじゃないか
馬鹿野郎もしも俺らが休んだら
お前たちの時は止まってしまう
そしたらお前らは全員死ぬんだぞ

お前が休んでも俺らは死なない
試しに時計を止めてみろよ
もしも俺たちが死んでも
責任はすべて俺がとるから

時計は動きをとめた
なぜ誰も死なないんだ
お前らは時を動かしているんじゃない
お前らはただ時を知らせるだけだ
こんなくだらねえ仕事もうやめだ

2/28
俺は太ももに違和感を覚え
鳥になる夢から目を覚ました
ふと太ももに目をやると
太ももからキノコが生えていた

昨日飲みすぎたせいか
何があったのか何も思い出せない
俺にキノコが生えているのか
キノコに俺が生えているのか
それすらも俺はわからなくなっていた

俺は電話帳を開き
キノコに詳しそうな奴を探した
そういえばストリップバーにいた
ブロンドの女も太ももに
キノコを生やしていた

俺はブロンドの女をみつけた
なんで太ももにキノコが生えるんだ?
知りたいなら50ドルよこしな
俺は黙って50ドルを支払った

生きることに
理由がないのと同じよ
生えたいから生える
ただそれだけのことよ
そう言って女は50ドル分の
踊りを踊って帰っていった

2/27
俺は橋から飛び降りようと
してる女を歌いながら眺めていた
あんた私を止めないの?
2階じゃダメだ8階にしとけ
あんたもしかしてプロ?

きのう俺は2階から飛び降りた
しかし見ての通り俺は生きてる
だからあんたは8階にしておけ
でも8は私が嫌いな数字よ
どうせなら9がいいわ

このビルに9階はない
9階がいいならあのビルに行け
あんたもしかしてプロ?
あのビルは俺が建てたから
間違いはない保証する

じゃあなんであんたは
あのビルから飛び降りなかったの
俺は高いところが怖いんだ
あんな高いところに行ったら
飛び降りる前に死んじまう

じゃあ私はあのビルに行くわ
受付にビリーという短気な奴がいる
そいつに2ドルと40セントを払え
そしたら9階に連れて行ってくれる
あんたって見かけによらず優しい男ね

2/27
俺の目の前に奴がいる
奴は怒鳴り散らしても
褒めちぎっても動かない
俺は死んでるのかと思い
何度も頬を叩いた

俺は奴にキスをした
やつはハローといって
突然饒舌にしゃべりだした
私は痛みを感じないの
でも愛は感じるの

じゃあ俺が愛をやるよ
長い時間をかけて育てた
このリンゴをお前にやる
皮を剥いてくれない?
皮があると私ダメなの

俺は皮を剥いてやった
まだ少しここに残ってるわ
これは皮じゃなくて汚れだ
汚れもとってちょうだい
汚れがあると私ダメなの

俺は汚れもとってやった
もうこんなのたくさんよ
なんでも私の言うことを
聞く男なんていらないわ
早く道をあけてちょうだい

2/26
俺は森の中を歩いてた
どこからか新しい音が聴こえた
たくさんの草をかき分けたが
壊れかけのピアノ以外
なにもみつけられなかった

俺は落ちていた石を拾い
石と何かを何度もぶつけて
新しい音を探していた
しかしそれは見つからず
時間だけが過ぎていった

俺の頭に何かが落ちた
拾ってみるとそれは
高級娼婦の鎖骨だった
俺はすぐに空を見上げると
白頭鷲が俺に微笑んでいた

俺は白頭鷲を追いかけた
奴はホテルのバーに入った
俺は静かに奴の隣に座り
奴と同じものを注文した

俺は高級娼婦の鎖骨を
グラスに入れてかき混ぜた
ついに俺は新しい音を見つけた
ふと視線を感じ隣を見ると
高級娼婦が俺に微笑んでいた

2/25
俺は真っ赤な絨毯の上で
サソリが交尾をするところを
パスタを食べながら眺めていた
俺はどっちがオスかメスか
全くわからなかったが
純粋な目をしてる方を応援した

気がつくとパスタは死んでいた
皿の上で硬くなりトグロを巻いて
トマトスープの血を流していた
しかしかろうじて息をしていた
パセリが愛人に電話をかけた

久しぶりね突然どうしたの?
前から言おうと思ってたけど
お前の家の排水溝にあるものを隠した
俺にはもう必要ないからお前にやるよ
そう言ってパセリは死んだ

女は排水溝に手をいれた
何かが手に触れそれを取り出した
よくみるとそれはセロリだった
女はセロリを丁寧に洗うと
花瓶にいれて嬉しそうに眺めていた

しばらくすると風が吹いた
しかし女の窓は閉まっていた
しかも女の窓は二重窓だった
ふと視線をセロリに戻すと
パセリの花が咲いていた

2/24
俺は常識に監禁されている
常識という鎖が体中に巻きついてる
俺は世間の隙を見て常識の鎖をほどき
全裸になって市役所を走り回った
すぐに警官が来て俺は服を着せられた

俺はキャロットを小指で切る
少量の塩を入れて薬指で混ぜる
火が通ったら中指に乗せて食べた
しかし味は全く覚えていない
一番楽しかったのは皿洗いだった

遠くから犬の声が聞こえる
俺は声のする方へと行った
そこにいたのは老婆だった
老婆は犬の声を出しながら
俺を見つめ小銭をせがんできた

俺は食べ残したキャロットを
老婆の手のひらに乗せてやった
すると老婆は突然立ち上がり
俺にキャロットを投げつけて
飼い主のもとへと帰っていった

たくさんの人間が歩いてる
みんなどこへ行こうとしてるのか
俺は一人の男の後をつけて行った
それから五十年の時が経った
俺は男にどこへ向かってるかの聞いた
男はどこへも向かってないと言った

2/23
ほんの少しでいいから命をくれ
そう言われて俺は少し命をやった
次の日またくれと奴は言ってきた
仕方なく俺はまた少し命をやった
次の日またくれと奴は言ってきた
俺は奴のバッグから命を取り出し
利子をつけて返してもらった

俺は花束に火をつけた
なぜなら花が枯れるところを
見ると悲しくなるからだ
俺は灰になった花束に
お前は誰よりも美しい
そう言ってそっと息を吹きかけた

空に白い粉が舞った
見たことのない白だった
どちらかといえばミルクような
ミルクというよりは母乳ような
限りなくミルクに近い母乳だった

何でお前がここにいるんだ
お前はもうここにはいないはずだ
俺がどこにいようと俺の勝手だ
俺はどこにでも行けるし何でもできる
お前も行けるのになぜ行かないんだ

俺は黙って歩き出した
行き先はわからない
ただどこか別の場所へ
俺は黙って歩き出した
行き先はわからない
ただ母乳の匂いがする方へ

2/22
俺は絶対に死なない
正確に言えば死ねないのだ
ジャンキーの医者に見てもらったら
心臓の周りに毛が生えていて
それが俺を死から守ってるらしい

俺は医者に言った
人を救えないで何が医者だ
俺は普通に死にたいんだ
だったら毛をむしってやればいい
そう言って医者は紹介状をくれた

俺は紹介状に書かれた場所に行った
ここには生き物の気配が全くなく
壁一面が真っ白で気が狂いそうだった
せめてもの救いだったのは
双子の小さな女の子が俺の耳たぶを
ずっと握っていてくれたことだ

ドアが開いて誰かがでてきた
そいつは泣きながら笑ってる
よくみると全身の毛をむしられてた
俺はそいつにキャンディーをやった
この世界はむしるかむしられるかだ
そう言ってそいつは消えて行った

俺はゆっくりとドアを開けた
床にはおびただしい数の
むしられた毛が落ちていた
俺は何度も自分に言い聞かせた
大丈夫俺の心臓には毛が生えている
気がつくと俺は双子の小さな女の子と
泣きながら笑い毛の海を泳いでいた

2/21
俺は雨が降ると知らない街へ行く
街で一番汚そうなカフェに入り
薄めのコーヒーを注文する
暇になると誰かのシケモクに火をつけて
こぼれた灰で人魚の絵を描くんだ

あたし綺麗好きなのと女は言った
じゃあ俺に触れてみろ
俺はたくさんの汚れ仕事をしてきた
どうしてだろうあなたには触れられる
当たり前だろだって俺は
綺麗な奴しか殺してねえからな

俺は退屈だから薪を割る
べつに暖を取るためではない
なぜなら俺の体のなかには
薔薇の心臓が三つあるからだ
心が凍えて死にそうなときは
すぐに俺に電話してくれ
道が空いてれば三日で行く

ウエイトレスは俺に言った
何のために生きてるんですか
しばらく考えてから俺は答えた
スクランブルエッグ卵抜きで
しばらくすると皿だけがきた
俺はウエイトレスを呼んで
皿をテイクアウトすることにした

俺は家に帰った
家といっても知らない家
俺は知らない家に勝手に住んでる
この家には娼婦と老人と警官が
三匹の馬と幸せに暮らしている
だから俺はこの家に住んでいる
俺はこの家が好きでしかたがない

2/21
俺は歩くたびに
床にあるトマトにつまずく
片付ければいいのはわかってる
しかし片付ける暇があるなら
つまずいてもいいから
一歩でも前に進みたいんだ

砂漠を歩く女がいた
どこへ行くんだと聞いたら
みんなが行く方へと女は言った
みんなが地獄へ行ったら
お前も行くのかと聞いたら
もちろん行くわと女は答えた
俺はあまりの恐怖にしばらくそこで
知らないジャズを聴いていた

一人でいると気が狂いそう
だから女は狼の群れの中で暮らした
気がつくと女の腹はでかくなり
顔は猿で体は鹿の赤子を産んだ
女はその赤子を大事に育て
二十歳のときに追い出した

俺は罠にかかった猿鹿を見つけた
五年ぶりの肉に俺は興奮した
すぐに背中に担いで家に帰ったら
猿鹿の母親が俺の家に尋ねてきた
猿鹿を食べると猿になると言われ
俺は仕方なく鹿だけを食べた

俺はホットドッグお前は?
私は塩水だけでいいわ
お前が何か食ってるところ
見たことないがお前は
もしかして宇宙人なのか?
違うわあなたが宇宙人なのよ
そう言って女は星になった

2/20
ドアが開く音がした
奴らがやってきた
俺はバスタブに潜って
奴らがいなくなるのを
ペニスを長くして待っていた

大理石のキッチンには
弱火で温めたシチューがある
俺は一刻も早くそれを食べたかった
しかしそれはできない
奴らがそこにいるからだ

とつぜん雷が鳴った
俺は雷が怖くてしかたなかった
長くしていたペニスは小さくなり
俺の心音は徐々に弱くなっていった

奴らは俺の部屋を荒らしている
何かを探しているようだ
ついにバスルームのドアが開いた
奴らは中に入ると長いキスを始めた

奴らと目が合ってしまった
俺は家賃の支払いを
一日だけ待ってくれと頼んだ
すると奴らは帰っていった
奴らの帰った部屋は
なぜか深い森の匂いがした

2/19
俺は朝起きたらすぐに庭に出る
真夜中に酒に溺れ全裸で寝てる
石や葉を自分の家に帰すために
あいつらは俺の気持ちも知らず
今日もまた真夜中に酒に溺れる

俺は水槽の水をアリの巣穴に流し込んだ
するとアリの警官に尻を撃たれた
俺はまだ親父にも撃たれたことがないのに
腹が立った俺は妹の旦那の猟銃を盗み
夜が明けるまで引き金を引き続けた

音のない時間が長く続くと
俺の頭は大声でしゃべりはじめる
だから俺は奴がしゃべるのを
いつでも止められるように
常に眉間に塩を塗っている

空を見上げたら
大きな女が振ってきた
女は美しい瞳をしていたが
両手と両足がの薬指がなかった
俺はがっかりして
きのう娼婦が忘れていった
花柄のワンピースを着せてやった

今日は小指がうまく動かない
きのう素手でピエロを殴ったからか
だってあいつは俺の大切な静寂を
一歩も動かずに奪っていったから

2/19
俺は黒い球を追いかけて
闘牛の走る高速道路に飛び出した
何度も何度も跳ねられながらも
俺は黒い球を追いかけて
気がついたら俺は黒い球になっていた

女が冷蔵庫のなかで泣いている
俺は女に水をかけながら言った
何がそんなに悲しいんだ
すると女は何も言わず
カッテージチーズを耳に詰めた

俺は将来が見えなくなって
酒場の闇医者へ会いに行った
奴は口はクサいが腕はいい
俺は奴の前で全裸になると
奴は一通り俺の体を愛撫したあと
どこも悪くないと言って
誰かが残した肉を食べた

家に帰るとネズミの夫婦が
キングベッドでファックをしていた
俺はそれを眺めながら
たまった請求書に火をつけて
ロマンチックなダンスを踊った

太陽が死んで月が産まれたら
俺はシャワーを浴びて
まとわりついた今日を洗い流し
明日はきっと良い日になる
と言いながら排水口に詰まった
今日をあつめてトイレに流し
庭に掘った穴の中で眠りにつく

2/18
俺は後ろからいきなり殴られた
地面が生まれたばかりの子鹿のように
不安定に小刻みに震えている
何が起こったのか理解するために
俺はスーパーマーケットでもらった
レシートの裏を覗き込むと
そこには雑草を口の中に入れられた
俺の醜い顔の絵が描かれていた

目がさめると俺は老人になっていた
昨日まではまだ青年だったのに
すると前から老人が歩いてきた
老人は何も言わず俺にツバを吐きかけた
お前は俺の若い頃にそっくりだ
今ならまだ間に合うすぐにここを立ち去れ
そう言って馬の尻の穴に入っていった

俺は海岸沿いをシラフで歩いてた
いちばん潮くさい場所につくと
飲みかけのウイスキーの瓶があった
俺はその瓶に売春婦の家から盗んだ
砂糖をいれ太陽にかざしながら
いつまでも光を楽しんでいた

角部屋に住んでいる
シスターのベロニカが
ムダ毛を剃っているときに
間違って神を殺してしまった
と言いながら全裸でステーキを
食べているとことろを
俺は協会の裏で見てしまった

俺は絶対に飛べると思っていた
だってマムは蝶でダッドは鳥だから
しかし俺は忘れていた
グランパが戦争から帰ってきたら
アリになっていたことを
だから俺は今でも飛べないんだ

2/17
頭が割れるように痛い
まるで頭の中で野ウサギが
踊りながらファックをしているようだ
きっと昨日クギを一気飲みしたからだろう
それとも砂を鼻からすすったからか
祈れば治るなら俺はとっくに治ってる
だって俺にはもう指がないからな

カモシカもスープの匂いがして
2ブロック先の穴へ入ると
隣人の呼吸が手にとるように感じて
気がつくと私はサメになってた

黒にこう言われた
ブラックよ俺とお前は同じ色なのに
なんで俺は黒でお前はブラックなんだ
俺とお前は何が違うんだ?
俺の血にはイタリアの血が入ってるからな
俺はそう答えた

薬指に巻きつけた
ベビーシッターの合鍵は
第二関節をノックし続けて
開いたドアの隙間から
夕暮れの海を眺めていた

売春婦のキャシーから借りていた
ピンク色の小さな懐中時計を
税務署の四階から落としたら
モータープールの底で笑ってた

2/16
ラクダの色した猫くらいの犬に
お前の明日を俺にくれって言ったら
どのツラ下げて言ってんだ
俺の明日は俺だけの物だって言われたんだ
だから俺は落ちていた落花生を
ラクダの色した猫くらいの犬の
豚くらいの牛にねじ込んでやったんだ

2/16
イかれた前髪のケニーっていう女の子が
僕は靴紐を結べるまで待ってくれるんだ
それをみて僕は吐き気をこらえ
夜になれば魚が泳ぐ夜になれば魚が泳ぐ
それを何度も繰り返すんだ